末期大山ドラとは何だったのか?
まず、「末期大山ドラ」について簡単に解説するが、(その定義は人それぞれ異なるかもしれないが、)大まかに言ってしまうと2002年10月に行なわれたリニューアル以降の大山ドラを指していることが多い。2002年10月、OPの「ドラえもんのうた」が山野さと子版から東京プリンに変わり、EDはゆずの「また会える日まで」に変更された。同時にアニメ本編のほうは、セル画制作からCG制作にも切り替えられた。このことはファンのみならず、そうでない人も新聞や雑誌などの報道で知った人も多いだろう。このリニューアルの狙いについて、当時の読売新聞はこう伝えている。
「『ドラえもんの歌は大杉久美子、山野さと子の温かみのある歌声で長年親しまれてきたが、今回ロック調にアレンジされた主題歌をうたうのは男性二人組みの『東京プリン』。歌詞もこれまでほとんど知られていなかった3番を使っている。映像は、リズムに合わせてドラえもんやのび太たちが踊るノリのいいものになった。(中略)
製作側は『25年目を迎えるのを機に、もう一度原作者の藤子・F・不二雄のメッセージを全ての世代に再発信しようというのが狙い。今までの歌になじんだ人には抵抗があるかもしれないが、切り口を変えるということ』と説明する。だが背景にはマンネリ化による最近の低視聴率の伸び悩みを打破したいというもくろみも垣間見える。
 また、デジタル彩色については、『これまでドラえもんの青の色を表現するのが難しかったがそのめどがついたのでこの機会に変更した』という。その反面「原作者の作った、空き地に土管があるという空間は、既に懐かしさを超越したファンタジー。この世界観は大切にしていきたい。』と強調。一部でうわさになっていた声優の変更や新キャラの登場についても『今のところ予定はない』と否定している。」(読売新聞夕刊2002年10月9日付)

だが、それに対するファン・視聴者の反応について、当時の週刊文春がこのように伝えている。
「テレビ「ドラえもん」リニューアルに全国の子どもたちが泣いている」

 やあ、ぼくドラえもん。最近アニメの『ドラえもん』がリニューアルしたんだけど、それがどうも評判があまり良くないみたいなんだ。
 十月十四日の読売新聞には、十三歳の中学生からの「オープニングが歌詞も映像もいきなり変わっていて驚いた」「親しみやすい前の曲がいい」という投書が載っている。(中略)

曲は今まで通り「ドラえもんのうた」だけど、曲調はがらりと変わって、やけにロック調。歌っているのも男の人だし、ぼくやのび太君、しずかちゃんたちがメロディーに乗って激しく踊ったり、“ドラ焼き型”のぼくが登場したり、随分にぎやかになっちゃったんだ。(中略)

子どもたちのお父さんお母さんも驚いたみたい。
「年末恒例の特番を今やっているのかと思うくらいの変わり様でした」
(六歳と二歳の子の母親)

「子供心に『ドラえもん』はほのぼのとする漫画というイメージが強いようで、今回の変更にはショックを受けている。前の方がよかったと言っています」
(十歳の子の父親)

(週刊文春2002年11月21日号より)

そして、一部メディアで報道されていた「視聴率低下のためのテコ入れ」目的ということについて、テレビ朝日の広報は、

「視聴率は関係ありません。来年四月に放映二十五周年を迎えるにあたって大きく変えていこうということになりまして今回はその第一弾です」

あくまで視聴率低下のためのテコ入れではないということを、当時のテレ朝は否定していた。


そんな視聴者の不評とは裏腹に、その後主題歌は、OPは「ドラえもんのうた」のまま、歌が渡辺美里、AJIと変わっていき、エンディングのほうはタイアップ色の強い選曲となり、島谷ひとみ、THE ALFEE、W(ダブルユー)と変わっている。特にWのエンディング起用にいたっては、視聴者からもの凄い酷評の嵐であった。

「言うまでもなく、今回の歌は主題歌でも何でもない。エンディングに流れる、タイアップ歌だ。メロディ、歌詞、どこからみても、ドラえもんとの関連性は全く感じられない。「ああ いいな!」という曲のタイトルがドラえもんっぽいとでも言うのか?(中略)関連性を感じる人がいたらどの部分に感じたのか聴きたいものだ。同時に、感じた人は、どの程度、作品としてのドラえもんを認識しているかも知りたい。この曲、好き嫌いははっきりするはずだから。日本国民全体を見たら圧倒的に嫌いの方が多いと思うけど。」(MISTTIMES.com Blog:「ドラえもんと辻希美と加護亜依とつんく♂と」)

つんくはドラえもんを軽視しているとしか思えません。これを歌わされたWのお二人も可哀想に思えます。しかもこれが初の本格的シングルになるとは…。大手を振って『これはドラえもんのエンディングだ!』といった態度で歌って欲しくないです。ドラえもんにとってもWにとっても恥さらしとなるはずです。」(ドラえもん'sホームページ:ドラえもん掲示板より
主題歌という面だけで見ても、視聴者・ファンに大きな賛否両論(というよりむしろ否否一論?)を起こした2002年秋のリニューアル。だが、ファンや視聴者が怒っていたのは何も主題歌のことばかりにとどまらない。彼らが重要視する本編においても、おかしな方向になっていた。


先述した週刊文春の記事ではこんなことも伝えている。
(前略)原作者である藤子・F・不二雄さんが亡くなってから『ドラえもん』は変わったというファンの指摘もあるんだ。

『ドラえもん』の魅力は、日常にベースが置かれていること。でも最近の『ドラえもん』は、映画などでやたらに環境問題を取り入れるなど、子供の視点を離れてしまっているのが鼻につく」(七歳と三歳の子の父親)
事実、この頃の本編に対する評価はあまり芳しいものではなかった。MISTTIMES.com BlogのTOJHO氏は、当時の作品をこう批評している。
道具の面白さよりは、キャラクターのグンニャリとした動きや過剰すぎる演出で笑いを取る作品になっている。

「中には、ドラえもんの漫画を全く読んだことのない人が、今までの設定を無視して脚本を書いた事もあった。
またその間、2002年の大晦日スペシャルでは、『ドラえもん』の原作第1話である『未来の国からはるばると』がアニメ化されている。この際、テレビ朝日は「23年目にして初のアニメ化」などと宣伝していた。だが、実際は1980年の正月にすでにアニメ化されており、その第1話が収録されているビデオソフトもすでに発売されていた。最近でも、「大山のぶ代声のドラえもんが復活」などと宣伝しながら実際はランキング内で大山ドラの映像が少し流れただけといった、「インチキ」ともとれる行為が行なわれていたが、実は大山ドラ時代でも似たようなことがあったのである。

その上、実際に放送されたアニメでは、ドラえもんがのび太の家に来て初めてドラ焼きを食べたことになっていた。しかし、ドラえもんがドラ焼きを食べたのは、1995年に公開された映画『2112年ドラえもん誕生』において、ノラミャー子から貰って食べたのが初めてとされており、作者の藤子・F・不二雄先生もこれを認めている。藤子F先生が認めた設定すらも完全に無視しているのだ。


そんなの原作ファンの勝手な評価じゃないのかと思われるかもしれない。作品の出来については、見た人の主観によるところも大きいので、そう思われても仕方がない。とすれば、ここは実際にその作品を見てもらうより他に仕方がない。

ここに一つの作品を紹介する。これは2005年3月18日、大山ドラの最後の新作として放送された『ドラえもんに休日を・・・』である。原作コミックの第35巻に収録されている作品のアニメ化であるが、実際はほとんどオリジナルストーリーとなっている。Wikipediaではこのように紹介されている。
2005年版アニメではのび太が誤ってブザーを押してデート中のドラえもんを呼びつけてしまう。怒ったドラえもんが未来へ帰り、後は「オールキャラ夢の大集合」というだけあって原作とは異なりセワシ、ドラミ、ミニドラたちが登場するといった、ほぼオリジナルのエピソードとなっている。原作の「自力で頑張るのび太」というのび太の成長が描かれるどころか正反対に「ドラえもん無しでは何も出来ないのび太」のまま描かれており、「改悪」とする意見も聞かれる。(Wikipedia:「ドラえもんの最終回」より)
この作品は2007年7月1日現在、YouTubeに動画がUPされており視聴が可能である。

ドラえもんに休日を?!(1/3)  ドラえもんに休日を?!(2/3) ドラえもんに休日を?!(3/3)


私もこの作品を観たが、原作とはかけ離れたものになっており、正直残念に思った。いや、それを差し引いても、そもそもキャラの登場の仕方があまりにも無理矢理だし、たとえ原作を読んでいなかったとしても、純粋に面白いとは言えず、むしろつまらなかった。これが大山ドラの最後を締めくくる作品というのはあんまりである。(あくまで私の主観だが。)

この作品を観て、皆さんはどのような感想を持ったのか、ぜひとも掲示板に書き込んでもらいたいところだが、少なくともドラえもんファンからは、この最終回に対してあまりいい評判は聞かれなかった。中には「末期の迷走を象徴する終わり方」と評価する者もいた。それほどこの大山ドラの最終回というのが、「末期」の迷走ぶりの一端を示していたということなのだろう。


そしてその翌週の3月25日の『ワンニャン時空伝』の地上波放送をもって、大山ドラは26年の歴史に幕を下ろした。そして、声優交代を含めた完全リニューアルという大改革を断行することになるのである。


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